見栄っ張りの失敗
「俺リング見たことある!」と
ホラー映画見れるぜ自慢をする子が
小学校高学年になると急激に増えた。
私も5年生のころ、それに感化され
リングと呪怨見たよ!と言いたくなり、
クラスで大人ぶるために
ホラー映画デビューを決意したクチです。
何を見ようか真剣に考えて、
映画好きの友達の勧めで、
「IT」を観ることにしました。
「近所のツタヤで借りたよ〜^^」って言ってたので
親に連れてってもらいました。
ITはホラーの巨匠、スティーブンキング原作で
ざっくり要すると、ピエロが出てきて怖い作品です。
ピエロならそんなに怖くなさそうだという点、
なのに「スティーブンキングのIT見たよ」とかっこよく自慢できる点、
この2点が私の背中を押しました。
ホラー映画デビューに相応しい!さっそく借りに行くか!
ツタヤでビデオのパッケージを見たとき、
白塗りの美しさと、ピエロの不気味さに固まりました。
でも最初から怖い奴の見た目を教えてくれるって親切だよね〜と前向きに捉えレジへ。
そして、いよいよ人生初のホラー映画鑑賞をしようとしたとき。
友達はみんな両親と見たと言っていたので私も当然両親と見るつもりで映画を借りました。
なのに
うちの両親はホラー映画が見れない人だったのです!
全ての大人は等しく全員ホラー映画が見れるものだと思っていたので大ショックでした。
うちの親はホラー映画が観れないだなんて
恥ずかしくて誰にも言えない。それくらいに。
「少しも視界に入れたくないから、私たちが寝たあとか居ないときに一人で見てね。」
と母に言われたから、みんなが寝静まった夜に一人で観ました。
リモコンもって毛布を被って。
観る前にトイレも行って、万全の準備をして。
全てはホラー映画観れるっていうために。
全ては学校で「スティーブンキングのIT観たよ」と言うために。
今だからちょっとわかるITの良さは、
最初っからピエロが出てきて怖いよって
ある程度のネタバレがある作品であったところです。
見知らぬ何か、原因がわからない呪い、など
不透明な部分がなかった。
実際は「ピエロの姿をした何かしら」が子供を殺そうとするので
あいつの正体はなんなの?
と言う疑問はあるのですが、とにかくピエロとして出てくるのです。
そしてそのピエロならではの恐怖アプローチが素晴らしい。
突然出てきたり大きな音を出したりするようなことはほぼない。
でるよ〜〜〜でるよでるよ〜〜〜
って「でる予感」をちゃあんと煽ってくれて、
登場シーンはゆっくりと。見せ場でっせ〜〜〜
いくよ〜〜いくよ〜〜
えっ!?そこからでんの〜〜〜!?!?
登場の仕方が怖いのにカッコよくてピエロっぽい。
小学生のホラー映画デビューに本当にふさわしかったと思います。
私は続編まで借りて見て、毎回トイレに行けなくなって、
マクドナルドのドナルドが暫く直視できなかったです。
でもそれがホラー映画の醍醐味だから〜なんて思えるようになって、
一皮むけた小学生の仲間入りを果たしたのでした。
でもね、いざ学校で言ってみるとね、
「ITってなに?スティーブンキング誰それ?」
って反応なんですよ。
ジャパニーズホラーじゃないから誰も知らない。
(私も他の作品知らんけど)
しかもITって1990年の作品だから古い!!
ぜんぜん自慢できない!!
私の頑張りはなんだったのか。
それに
「お母さんたちと観たの?」と聞かれると
「うん。」と言っちゃうのです。
本当は一人で観たからもっと凄いのに。
みんなよりもずっとずっと大人なのに。
のにのに。。。
親がホラー映画観れないことが恥ずかしくて、一人で観たことを言えなかった。
見栄ってなんなんだ。
今になって言えることです。
5年1組のみなさん、
あのとき本当はスティーブンキングのIT一人で観てました。