書きたいときしか書かない

文字に触れて落ち着きたくって始めました。2014.04.23

恐ろしい顔

 

「子供の頃から根性が腐ってるのは、もうどうにもならない」

 

これは舞さんの言葉である。

私も24になり子供は純真無垢な生き物だと思い始めていた。

 

保育園の頃を思い出してみる。

Nちゃんという子に毎日顔を引っ掻かれていた。

末っ子で、お兄ちゃんがいるNちゃんは

気に入らないことがあるとすぐに手が出る子だった。

私を仲間に入れたり、仲間はずれにしたりを繰り返した。

お母さんが保育園の保育士だから誰もNちゃんを強く叱らない。

Nちゃんはそれを分かっているクレバーな子だった。

 

次は小学校の頃、

いじめが流行っていた。

男女問わずクラスの誰かが必ずいじめられている。

毎週毎週誰かの靴がなくなる。

誰かと仲良くなるには、悪口や裏切りをするのが一番早かった。

私はこの頃から、学校に友達を作りたくはなくなった。

 

中学の頃はMという女子が、愛嬌があって人気者の女子Kの悪口を常に言っていた。

Kとすれ違うときはハッキリと本人の顔を見て

ブス!死ね!ブス、ブス、ブス!

と言っていた。それも大きな声で。

Mは体も態度も大きくて、なんとなく育ちが悪そうだった。

Mは私にもしばしば嫌がらせをした。

 

そうだ、思い出せば子供の頃から腐っている奴はたくさんいたのだ。

大人になって改心した人もいるかもしれないけど

成人式の時に見かけたMは性格が悪いままで、周りに人がいなかった。

 

 

今日、子供が万引きした瞬間を見た。

 

コンビニでお菓子の棚を見ていた時、早歩きで店内に入ってきた男の子がいた。

小学校高学年か中学1年生。

入るなりトレーディングカードに一直線。

お菓子の棚と同じ場所だ。

 

よっしゃーまだあった!

 

と小さくつぶやくのが聞こえた。

そしてガサッとカードの束をつかむ音も。

見ていたわけではないが、目の端に映った彼の行動。

まるで自分のもののような掴み方、

店内に入ってからの無駄のない早すぎる所作、

なんとなく異常さを感じて、私は彼の方に顔を向けてみた。

 

彼の顔がハッキリ見えた。そして目もあった。

 

いやらしいおっさんのような顔。

悪いことをしそうな人相。

ニタァと気持ち悪く緩んだ口元からは今にもヨダレが出てきそうだ。

 

あ、コイツ、盗る。

盗るかもじゃない。

絶対に盗る。

 

顔の表情だけでここまで直感に訴えられたのは初めてだった。

こんな顔、どんな名俳優にもできっこない。

すっかり世の中をなめ腐ったクズな顔を見て

本当は子供じゃなくて小さいおっさんなのかもしれないと本気で目を 疑った。

 

 

でもカバンに入れたわけでもないし、

目もあっているのに冷静だし、、、

 

それに子供だし

 

違う、、、よね?

 

そんな非日常的な話が私の身の回りで起きるわけがない。

子供が万引き?いやいやまさか。

プリングルス買って帰ろう。変なこと考えるのはやめよう。

 

そして私はレジにプリングルスを出した。

その瞬間、彼は走って自動ドアを出て、

鍵もかけずに入口付近においていたチャリに乗って走り去った。

チャリに乗る前に私に顔を外からチラッと振り返った。

顔は笑っていた。

 

彼は常習犯だった。 慣れていた。

人前でカバンにしまわないことも彼の鉄則の中に入っていたに違いない。

店員がレジで会計をしている隙に、

つまり私がプリングルスを出したのをキッカケに

店の外へ出て行ったのだ。

 

店員に言う。

あの子盗ってますよ。

 

なにがあの子盗ってますよだよ。

分かってたはずなのに、子供がそんなことするわけないと

思ってしまったが故に、目の前で犯罪が行われてしまった。

子供に盗みをさせる前になんとかできたとか、

彼を更生させられたかもしれないとか、そんな綺麗事ではなく

あいつに舐められていたことへの、利用されたことへの悔しさである。

 

子供の頃、Nに嫌なことをされた。Mにビンタをされたこともあった。

そんなときは決まって、絶対復讐してやると心を煮えたぎらせていた。

そう、私も少し根性の曲がった子供の一人であったのだ。

 

そのはずだったのに、してやられた。

子供のくせにあんなキモい顔を私の脳裏に残しやがって。

 

書くの疲れた。ここでやめる。