薄くて小さな器
猫を飼っている。
その猫は家で1番世話をしない母に懐いている。
猫の寝床は母の部屋。
誰が決めたわけでもないのに、いつの間にか定着していた。
猫は、母がトイレに行こうものなら、例え深夜、自分が寝ていても必ず起きて母のトイレが終わるのをじーっとドアの前で待っている。
物凄く眠たそうな顔をしながら待っていた猫に、母は「お利口だねぇ〜」と甘ったるい声をかけ、ひとなでし、寝室に戻る。猫もあとに続く。
母に対してまるで犬のような忠誠心をみせるのだ。
どうしてこんなに母に懐くのか。
私の方がずっとずっと世話をしてるし、私の方がずっとずっと仲良くしたいと思っているのに。
母は猫にこっそりオヤツをあげている。
自分も真似をしてみたが、それが理由で懐くわけではなさそうだった。
母はオヤツをあげる以外は、猫が寄り添ってくるのを待って、たまに撫でるくらいしかしない。
ちなみに、猫を撫でている間に
私に猫の飲み水を新しいのと取り替えさせることがしばしばある。
そのとき私は、私の方が猫のためになることをやっているのに、少しも懐いてくれないのはオカシイではないか、と嫉妬する。
ある日、ベッドの上でごろ寝をしていると、突然猫がベッドに飛び乗ってきた。
こんなことは今までなかったから、すごく嬉しかったんだけれども、気分次第で甘えてくる調子の良い猫が憎らしくなって、ニャーと鳴かれても目も合わせずに無視をし続けた。
するとどういうわけか膝のあたりに体を寄せて丸くなった。
この時から、猫をこれまでにないくらい愛おしく、今まで以上に憎らしいと思うようになった。
くっついたままボーッとする猫にそのまま無視を続けてみると、コテっと眠ってしまった。
仲良くなりたい人がいるのに
どうも距離が縮まらないのである。
私ら合わないのかな、と思い
連絡を断つと、急に向こうから、
ゴハンいこー!と連絡が来る。
この人もウチの猫と一緒である。
私はいつも同じ失敗を繰り返す。
ゴハンに行って、
また連絡しすぎて、
連絡途絶えて、
忘れた頃、再びゴハンに誘われる。
猫か、お前は。
と言いたくなるし、
バカか、お前は。
とも言いたくなる。
猫と人間を同じく見ているワケではないが、私が猫とこの人に対して抱いている気持ちは
私がこれだけ想っているのだから、
せめて同じくらいの熱量で
私のことを想ってくれよ。
と、とても似ているのである。
・・・ここまで書いて、1050字。
読み返してみて、
ワタシ、ワタシ、と
一人称を多用してるところに自己中心的な性格が出てると感じ、恥ずかしい。
悩みの薄っぺらさに、
思春期かよ、
と冷静に突っ込みを入れられたところで、おしまいにしたいと思います。